下痢・軟便
下痢とは?
頻繁に便意をもよおし、排便回数が多くなるというだけでなく、便の水分量が多くなり、軟便やかゆ状の便となって出てくる状態を下痢とよびます。正常な便の水分含有量は75〜80%ですが、80%を超えると、便は本来の理想的な固形状の形を失い、時には水のようになることもあります。原因は消化不良によるものをはじめ、消化酵素や栄養不足によるもの、腸の炎症によるもの、アレルギー性や神経性のものなど、本当にさまざまです。 多くの場合は一般の下痢止め薬を服用したり、食事を抜いて番茶や湯ざましなどで水分を補給することで対応できますが、長く続いたり、発熱や腹痛、嘔吐などを伴う時はなんらかの病気の一症状、または食中毒ということも考えられます。こうした場合は、早めにかかりつけの医師の診断を仰ぎ、適切な処置や治療を受けるように心がけましょう。
下痢の起こるメカニズム
腸の働きが正常な場合、食事などで摂取した食べ物は食道から胃を経て、およそ10時間ほどで直腸のすぐ上のS字結腸に達します。ここで消化された内容物から適当な水分が吸収されるために、適度な固さの便がつくられるわけです。しかし下痢の場合は、なんらかの原因によって腸粘膜からの水分分泌が多くなり、腸管内に異常な水分がたまってしまう、あるいは腸管内を内容物が必要以上の速度で通過してしまうことで、腸内での水分吸収がうまく行われない状態になってしまいます。そしていずれの場合も、腸内の状態や機能を正常に戻そうとして、腸自体の運動が異常に高まります。このため、液状や泥状の便が排泄されてしまうのです。
急性下痢
- 急に排便の回数が増え、軟便が出る
- 急性の下痢の場合は、ハッキリした原因があります。そのうちの多くは寝冷えや、食べ過ぎ、飲み過ぎ、食事アレルギーなどの原因によって腸内に炎症を起こし、消化吸収に障害をきたしてしまうのです。症状としては左下腹部痛や“しぶり腹”などがありますが、比較的軽いものであれは、水分を適度に補い、腸を刺激しないようにしていれば数日で治まります。
- こんな場合は医師の診断を
- しかし、下痢の他に発熱や激しい腹痛、嘔吐を伴うときは、細菌性の腸炎など重症のケースも十分に有り得ます。また、血液のまじった水のような便(粘血膿性便)が続くときも要注意。潰瘍性大腸炎といった重い病気であることが考えられます。いずれの場合も、早急にかかりつけの医師の診断を受けるようにしてください。
慢性下痢
- 長期間くり返す下痢なら「慢性」
- 下痢が2〜3週間以上も続いたり、くり返したりする場合は、ストレスなど神経性のもの、あるいは胃腸の病気や全身的な病気の一症状、または薬物による腸内の炎症…と、いくつかの原因が考えられます。なかでも血便や発熱を伴う場合の不養生は禁物。一刻も早く、かかりつけの医師の診断を受けなくてはならないでしょう。
- 過敏性腸症候群
- 慢性下痢のなかでも圧倒的に多いのが「過敏性腸症侯群」。この病気はちょっとしたストレスでも心身が敏感に反応してしまい、腸に過剰な運動を起こしやすくする刺激を与えてしまうことが主な原因です。代表的な症状としては、頻繁な便秘や下痢などが2〜3週間以上慢性的に続きます。
治療のポイント
- 適切な水分の補給を
- 下痢の治療の場合、吐き気がないかぎり、脱水症状を併発しないためにも適切な水分の補給が大切です。ただし、日本人は乳糖を分解する酵素のはたらきの低い人が多いので、牛乳は避けたほうがいいでしょう。番茶や湯ざまし、あるいはイオン飲料などを飲まれることをおすすめします。その他、体を冷やさないように、暖かい服装をすることを心がけましょう。
- 腸のはたらきを助ける整腸薬
- 下痢を治す薬には腸の働きを正常にする整腸薬と、下痢の症状を止める下痢止めがあります。整腸薬の主成分には乳酸菌や、水分を吸収して適度な固さの便をつくり、腸内の有害菌の働きを抑える食物センイなどが用いられており、腸の働きを活性化させてくれます。
- 下痢をくいとめる成分
- 下痢止めの薬の主成分としては腸粘膜を保護するタンニン酸、ビスマスなどの収れん剤の他、有害物質を吸着する成分や腸の運動を抑制する成分、ベルベリンなどの腸内殺菌剤などが用いられています。実際にどの薬を服用するかは、症状にあわせて、かかりつけの医師や薬局・薬店でご相談ください。