皮膚科専門医からのメッセージ

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爪水虫や爪に関する正しい情報を皮膚科専門医からお届けします。

第2回女性でも油断大敵!爪水虫〜爪の異常、ペディキュアやつけ爪で隠れていませんか?〜

監修:順天堂大学医学部 皮膚科学講座 木村 有太子 先生 第2回は女性と爪水虫について、順天堂大学医学部 皮膚科学講座 木村 有太子 先生にお話を伺いました。
爪水虫は男性に多い病気ではなく、患者さんの男女比はほぼ同じです。女性の場合、足にペディキュアやつけ爪をすることによって爪の異常に気が付かず、治療が遅れてしまうことがあるため、注意が必要です。また、爪水虫の進行により爪の変形や痛みが生じ、転倒や転倒からの骨折を引き起こすことがあります。転倒から骨折する背景には骨粗しょう症があるため、特に骨粗しょう症のリスクが高い高齢の女性は早期からの治療が大切です。
健康で長生きするためにも、「爪水虫かな?」と思ったら早めに皮膚科を受診しましょう。

爪水虫は、正しい診断と治療で治癒を目指すことができる病気

爪が変色、変形しているといった症状がある場合、それは爪水虫という爪の感染症かもしれません。爪水虫は、日本人の13人に1人がかかっているとされており1)、正しい診断と治療によって治癒を目指すことができる病気です。

爪水虫は男性が多いと思っていませんか?

水虫というと、男性が多いイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、爪水虫の男女の割合はほぼ同じであることが報告されています(図1)1)。また、爪水虫は家庭内で感染することが多く2)、家族や子どもにうつす可能性があるため注意が必要です。

図1:本邦における爪水虫の潜在罹患率

n=1,154例(そのうち性別不明5例)

目的:
2007年の調査以降、大規模調査を実施していなかったため、現在の足白癬・爪白癬の潜在的罹患率を把握するため実施。
対象:
全国の日本臨床皮膚科医会の会員(4,450名)の所属施設のうち、調査協力の許諾が得られた211施設の皮膚科外来に2023年4月~2023年5月の間に受診した患者(初診・再診、受診理由、疾病は問わない)。
方法:
アンケート調査票の記入を依頼し、年齢、性別、受診の目的、足の健康調査への参加の可否について回答を得る。
参加同意が得られた患者について、担当医師による足の健康調査を実施し、足および爪の疾患・症状の有無、足白癬・爪白癬が疑われた場合の確定診断・治療の希望の有無を確認。希望があった場合は通常の診療として確定診断および治療を行い診断方法、診断結果、治療内容を調査票に記録した。

畑 康樹ほか, 日臨皮会誌, 41(1), 66-76 2024. より作成

あなたの爪にも、爪水虫が隠れているかも?

爪水虫になると、爪の一部が白色や黄色に変色し、進行すると変色部位が徐々に広がり、爪が厚くなっていきます。初期の段階では痛みやかゆみなどを感じることはほとんどありません。そのため、普段から足にペディキュアやつけ爪などをしている女性は、爪の変色に気が付かず治療が遅れてしまうことがあります(図2)。ペディキュアやつけ爪を取り除いた時に、爪の異常がないかチェックするようにしましょう。

図2:つけ爪を外したら爪水虫だった例

写真提供:順天堂大学医学部 皮膚科学講座 木村 有太子先生
画像はイメージです(STUDIO REACT / stock.adobe.com)

つけ爪をしていると、爪とつけ爪の隙間が生じる場合があり、その隙間に水がたまりやすくなります。そこに爪水虫の原因である白癬菌が付いてしまうと、白癬菌にとって育ちやすい高温;多湿の環境のため、爪水虫になってしまうことがあります。

健康で長生きするためにも、爪水虫の治療を。

爪水虫がさらに進行すると、爪の変形や痛みが生じることで歩きづらくなり、運動機能の低下をもたらします。なかでも高齢の方は、足の爪の変形や爪が厚くなると、転倒しやすくなることが報告されています(図3)3)。女性の場合は、年齢を重ねると骨粗しょう症になりやすく、転倒による骨折をきっかけに寝たきりになってしまうこともあるため、健康で長生きするためにも爪の異常を放置しないことが大切です。

図2:高齢者における足の爪の異常と転倒経験との関係

目的:
本邦における高齢者を対象に、足趾・爪に関する問題と転倒経験及び転倒不安との関連性について検討する。
対象:
3つの自治体に在住する高齢者(75.2歳±5.60歳)10,581例(男性4,735例、女性5,846例)
方法:
足趾・爪に関する問題とそのケア、転倒経験及び転倒不安、老研式活動能力指標、有病状況、下肢機能障害について質問紙調査を実施し、足趾・爪に関する問題及びそのケアと転倒の関連性を男女別に検討した。

原田 和弘 ほか, 日本公衛誌, 57(8), 612-623, 2010 より作成

爪水虫は、市販薬(OTC 医薬品)では治りません(2025年3月時点)。

市販薬(OTC医薬品)には爪水虫の治療薬がなく、爪水虫に対して効能・効果が認められているお薬(のみ薬、ぬり薬)は、医療機関でしか手に入りません。また、爪水虫の治療は根気よく続ける必要があり、症状が進行すると治療に必要な期間がさらに長くなる可能性もありますので、「爪水虫かな?」と思ったら早めに皮膚科を受診しましょう。

  • 1)畑康樹ほか,日臨皮会誌,41(1),66-76 2024
  • 2)渡辺 晋一ほか, 日皮会誌, 111(14), 2101-2112, 2001
  • 3)原田 和弘 ほか, 日本公衛誌, 57(8), 612-623, 2010

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爪水虫のセルフチェック