皮膚科専門医からのメッセージ

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爪水虫や爪に関する正しい情報を皮膚科専門医からお届けします。

第2回
爪の異常、ペディキュアや
つけ爪で隠れていませんか?

~女性でも油断大敵!爪水虫~

監修:順天堂大学 皮膚科 木村 有太子 先生

第2回は女性と爪水虫について、順天堂大学 皮膚科 木村 有太子 先生にお話を伺いました。
爪水虫は男性に多い病気ではなく、患者さんの男女比はほぼ同じです。女性の場合、足にペディキュアやつけ爪をすることによって爪の異常に気が付かず、治療が遅れてしまうことがあるため、注意が必要です。また、爪水虫の進行により爪の変形や痛みが生じ、転倒や転倒からの骨折を引き起こすことがあります。転倒から骨折する背景には骨粗しょう症があるため、特に骨粗しょう症のリスクが高い高齢の女性は早期からの治療が大切です。
健康で長生きするためにも、「爪水虫かな?」と思ったら早めに皮膚科を受診しましょう。

「爪水虫は男性が多い」と思っていませんか?

図1:爪水虫と診断された患者の男女比

爪水虫と診断された3,474例の内訳(そのうち性別不明7例)

  • 目 的:足水虫・爪水虫の実態を調査し、潜在罹患率を把握する。また、足の健康チェック及び参加医の診断根拠や治療法などの実態を調査する。
  • 対 象:全国の756施設に足の水虫以外の目的で受診した34,730例
  • 方 法:全国の日本臨床皮膚科医会の会員にフットチェック調査の協力を依頼し、調査票にて①性別、年齢 ②足症状の有無(ある場合はその診断、治療希望の有無)③足水虫、爪水虫がある場合は診断の根拠、治療法 ④家族感染の有無などを集計し解析した。

仲 弥ほか, 日臨皮会誌, 26(1), 27-36, 2009 より作成

水虫というと、男性が多いイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、爪水虫の男女の割合はほぼ同じであることが報告されています(図1)1)。また、爪水虫は家庭内で感染することが多く2)、家族や子どもにうつす可能性があるため注意が必要です。

あなたの爪にも、爪水虫が隠れているかも?

図2:つけ爪を外したら爪水虫だった例

写真提供:順天堂大学 皮膚科
木村 有太子 先生

画像はイメージです(STUDIO REACT / stock.adobe.com)

つけ爪をしていると、爪とつけ爪の隙間が生じる場合があり、その隙間に水がたまりやすくなります。そこに爪水虫の原因である白癬菌が付いてしまうと、白癬菌にとって育ちやすい高温・多湿の環境のため、爪水虫になってしまうことがあります。

爪水虫になると、爪の一部が白色や黄色に変色し、進行すると変色部位が徐々に広がり、爪が厚くなっていきます。初期の段階では痛みやかゆみなどを感じることはほとんどありません。そのため、普段から足にペディキュアやつけ爪などをしている女性は、爪の変色に気が付かず治療が遅れてしまうことがあります(図2)。ペディキュアやつけ爪を取り除いた時に、爪の異常がないかチェックするようにしましょう。

健康で長生きするためにも、爪水虫の治療を。

図3:高齢者における足の爪の異常と転倒経験との関係

  • 目 的:本邦における高齢者を対象に、足趾・爪に関する問題と転倒経験及び転倒不安との関連性について検討する。
  • 対 象:3つの自治体に在住する高齢者(75.2歳±5.60歳)10,581例(男性4,735例、女性5,846例)
  • 方 法:足趾・爪に関する問題とそのケア、転倒経験及び転倒不安、老研式活動能力指標、有病状況、下肢機能障害について質問紙調査を実施し、足趾・爪に関する問題及びそのケアと転倒の関連性を男女別に検討した。

原田 和弘 ほか, 日本公衛誌, 57(8), 612-623, 2010 より作成

爪水虫がさらに進行すると、爪の変形や痛みが生じることで歩きづらくなり、運動機能の低下をもたらします。なかでも高齢の方は、足の爪の変形や爪が厚くなると、転倒しやすくなることが報告されています(図3)3)。女性の場合は、年齢を重ねると骨粗しょう症になりやすく、転倒による骨折をきっかけに寝たきりになってしまうこともあるため、健康で長生きするためにも爪の異常を放置しないことが大切です。

爪水虫は、市販薬(OTC 医薬品)では治りません(2023年8月時点)

市販薬(OTC医薬品)には爪水虫の治療薬がなく、爪水虫に対して効能・効果が認められているお薬(のみ薬、ぬり薬)は、医療機関でしか手に入りません。また、爪水虫の治療は根気よく続ける必要があり、症状が進行すると治療に必要な期間がさらに長くなる可能性もありますので、「爪水虫かな?」と思ったら早めに皮膚科を受診しましょう。

  • 1)仲 弥ほか, 日臨皮会誌, 26(1), 27-36, 2009
  • 2)渡辺 晋一ほか, 日皮会誌, 111(14), 2101-2112, 2001
  • 3)原田 和弘 ほか, 日本公衛誌, 57(8), 612-623, 2010

第1回
爪水虫とは
~爪が変色・変形していませんか?~

監修:埼玉医科大学 皮膚科 教授 常深 祐一郎 先生

再生時間:約6分30秒

今回は埼玉医科大学 皮膚科 教授 常深 祐一郎 先生にお話を聞きました。
常深先生は爪水虫が分類される「皮膚真菌症」分野における専門家です。
実は爪水虫は見た目では判断しにくい病気であり、爪に異変があっても爪水虫とは限りません。今回は爪水虫に似た症状の写真も紹介していますので是非ご覧ください。病気について正しい知識を得ることは健康への大切な第一歩です。

動画の見どころ

爪水虫の感染経路

爪水虫は感染症であるため、ご家族やお孫さんなど他の人へうつしてしまうことがあります。この動画では、爪水虫の原因やどのように感染していくのかについてお話しています。

これって爪水虫?

爪が変色する・厚くなる・ボロボロになるなどの症状が現れるのは、爪水虫だけではありません。この動画では、爪水虫に似た症状をもつ病気や診断に必要な検査についてお話しています。

医師からのメッセージは、順次公開を
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