ニュースリリース
令和5年5月
加齢や紫外線により増加するグランザイムBが分解するタンパク質を発見
国際学会で報告
佐藤製薬株式会社(本社:東京都港区、社長:佐藤誠一)は、2023年5月10日~5月13日に開催された、研究皮膚科領域で最大級の国際学会である「International Societies for Investigative Dermatology Meeting(ISID2023)」にて、加齢や紫外線などにより増加するグランザイムB*1が分解する新規基質について発表しました。この新規基質(ファイブリン5*2)は、皮膚のハリや弾力を保つはたらきがあるエラスチン*3の線維を作り出すために必須なタンパク質であることが知られています。この新たに見出したメカニズムを追究することで、肌弾力の悩みに対する今までにない解決法を提案できることが期待されます。
研究の背景及び成果
グランザイムBは、加齢や紫外線により増加し、皮膚を構成する様々な細胞外マトリックスを分解して組織の形成に悪影響を及ぼすことが知られていますが、皮膚の弾力性に重要なエラスチンの線維形成を司る細胞外マトリックスに及ぼすグランザイムBの影響について、詳細なメカニズムは明らかにされていませんでした。
本研究において、グランザイムBの新規基質として、エラスチンの線維を形成するために必須な細胞外マトリックスであるファイブリン5を見出しました(図2)。さらに、ファイブリン5は、グランザイムBに切断されることによりエラスチン線維形成能力を失うことを示しました(図3)。
この新規メカニズムについて理解を深め、加齢や紫外線曝露による肌弾力の低下を改善するための皮膚科学研究をさらに推進していきます。
図1:ファイブリン5のエラスチン線維形成作用に及ぼすグランザイムBの影響
*1 グランザイムB:加齢、紫外線曝露や炎症時に増加し、様々な細胞外マトリックスを分解するタンパク質分解酵素の一種。
*2 ファイブリン5:ファイブリンファミリーの一種であり、細胞接着・遊走やエラスチンの線維形成に関わる細胞外マトリックス。特定配列の変異は皮膚のたるみを特徴とする皮膚弛緩症の発症の原因になる。
*3 エラスチン:皮膚の真皮組織の約2~5%を構成する弾力線維。ゴムのように伸び縮みする性質があり、皮膚のハリや弾力の形成に重要な役割を果たす。
グランザイムBによるファイブリン5分解作用
方法 | ファイブリン5にグランザイムBを反応させ、電気泳動でタンパク質を分離後、銀染色またはウエスタンブロッティングにて検出した。グランザイムBの阻害剤としてSerpina3nを用いた。 |
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結果 |
図2:グランザイムBによるファイブリン5分解作用
ファイブリン5は、グランザイムBにより時間依存的に分解された(図2A)。また、グランザイムBによるファイブリン5の分解は、グランザイムBの阻害剤によって抑制された(図2B)。 |
エラスチンの線維形成作用
方法 | 線維芽細胞にファイブリン5の全長または断片を処置して培養した後、エラスチンを免疫染色法にて検出した。 |
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結果 |
図3:エラスチンの線維形成作用
ファイブリン5の全長はエラスチンの線維を形成させるのに対し、グランザイムBによって分解されたファイブリン5断片はエラスチンの線維形成作用を示さなかった。 |