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ニュースリリース

平成30年10月

オウバクエキスに皮膚のタイトジャンクションバリア機能強化・改善作用を確認

 佐藤製薬株式会社(本社:東京都港区、社長:【佐藤誠一】)は、皮膚機能と生薬についての研究を進め、皮膚のバリア機能を担うタイトジャンクションの主要構成タンパク質クローディン1の発現を促進する生薬エキスとして、オウバク*1エキスを見出しました。ベルベリンを主要成分とするオウバクエキスは、ヒト表皮角化細胞においてバリア機能強化作用を示し、ヒト三次元培養皮膚モデルを用いたバリア機能低下モデルにおいてもバリア機能改善作用を示しました。
 なお、本研究成果は、2018年9月1日(土)、2日(日)に開催された第35回和漢医薬学会学術大会にて発表しました。

1.研究の背景及び成果

 皮膚のタイトジャンクションは、表皮最外層に位置する角層バリアとともに、外部からの刺激によるダメージや体内からの水分の喪失を防ぐバリアとしての働きを担っています。このタイトジャンクションの機能が低下すると、角層バリアの機能にも異常を来し、肌の乾燥や肌荒れ、さらには皮膚の老化の促進につながると考えられています。
 皮膚のタイトジャンクションは角層直下の顆粒層の2層目において細胞と細胞との間を密につなぐ構造をとっており、その主要構成タンパク質として、クローディン1が知られています。クローディン1の発現はタイトジャンクションのバリア機能にとって重要ですが、加齢や紫外線ダメージにより、その発現が低下することが報告されています 。
 本研究では、皮膚由来の細胞においてクローディン1の遺伝子発現を指標として有用な素材を探索したところ、約300種類の植物エキスの中からオウバクエキスに、クローディン1発現促進作用があることを見出しました(図1,2)。そこで、ヒト表皮角化細胞を用いてタイトジャンクションのバリア機能を調べた結果、オウバクエキスにバリア機能強化作用があることが確認できました(図3)。さらに、ヒト三次元培養皮膚モデルに紫外線によって誘導される炎症性サイトカインの一種であるTNF-α*2を添加したバリア機能低下モデルにおいて、オウバクエキスはバリア機能の改善作用を示しました(図4〜7)。また、オウバクエキスの主要成分であるベルベリンについても同様の作用を確認しております(図8)。
 以上のように、ベルベリンを主要成分とするオウバクエキスは、クローディン1の発現促進作用を有し、タイトジャンクションのバリア機能を強化するとともに、紫外線を想定したダメージによるバリア機能低下に対しても改善作用を示すことから、皮膚のバリア機能の強化・改善に働き掛けることが期待されます。
 本研究成果については今後、新たに開発するスキンケア製品に活用していく予定です。

*1 オウバク:生薬名 黄柏(オウバク)として第十七改正日本薬局方に収載されている生薬。ミカン科植物であるキハダ(Phellodendron amurense Ruprechtまたは Phellodendron chinense Schneider)の樹皮を乾燥させて得られる生薬で、苦味健胃、整腸止瀉薬として生薬製剤にも配合されている。

*2 TNF-α:腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor)の一種。細胞から放出され、種々の細胞間相互作用を介して炎症を惹起させる炎症性サイトカインとしても知られている。

オウバクエキスによるクローディン1発現促進作用

方法 ヒト表皮角化細胞にオウバクエキスを添加して培養後、mRNA、タンパク質を抽出した。mRNAはリアルタイムPCR法で、タンパク質はWestern Blotting法で解析した。
結果

図1:オウバクエキスによるヒト表皮角化細胞のクローディン1 遺伝子発現促進作用

図1


図2:オウバクエキスによるヒト表皮角化細胞のクローディン1 タンパク質発現促進作用

図2


オウバクエキスの添加により、クローディン1 遺伝子(図1)および、タンパク質(図2)の発現が濃度依存的に上昇した。

オウバクエキスによるバリア機能強化作用

方法 Cell culture insertに播種したヒト表皮角化細胞にオウバクエキスを添加し、タイトジャンクションのバリア機能の指標であるTER*3を測定した。
結果

図3:オウバクエキスに よるTER 上昇作用

図3:


Cell culture insertに播種したヒト表皮角化細胞にオウバクエキスを添加したところ、TERが有意に上昇した。

*3 TER(Transepidermal Electrical Resistance):表皮の外側と内側の間の電気抵抗値であり、タイトジャンクションの形成に伴い高い抵抗値を示すことから、バリア強度の指標として用いられている。

オウバクエキスによるバリア機能改善作用

方法 UVB照射により産生が亢進することが知られているTNF-α を用いてヒト三次元培養皮膚モデルにバリア機能の低下を誘導し、このバリア機能低下モデルにおいてオウバクエキスの作用を評価した。
結果

図4:ヒト三次元培養皮膚モデル模式図

図4


  • 図5:UVB 照射により
    TNF-αの遺伝子発現が上昇

    図5

  • 図6:TNF-αの添加により
    TER が低下

    図6


図7:オウバクエキスによるバリア機能改善作用

図7


ヒト三次元培養皮膚モデルにおいてUVB照射により発現が上昇するTNF-α(図5)を添加したところ、TNF-α濃度依存的にTERが低下し、バリア機能の低下が誘導された(図6)。このバリア機能低下モデルにオウバクエキスを添加したところ、TNF-αによるTERの低下が有意に抑制され、バリア機能改善作用が認められた(図7)。

ベルベリンがオウバクエキスの活性成分として寄与している可能性の検証

方法 オウバクエキスの主要成分であるベルベリンが活性成分として寄与している可能性を検証するために、ベルベリンについても同様の評価を行った。
結果

図8:ベルベリンによるバリア機能改善作用

図8


図7で添加したオウバクエキス濃度中のベルベリン濃度を算出し、対応する濃度で同様に評価を行ったところ、ベルベリン単独でもバリア機能改善作用が認められ、ベルベリンが活性成分として寄与している可能性が示唆された(図8)。