平成27年9月
エイジツエキスにⅦ型コラーゲン産生促進作用を確認
佐藤製薬株式会社(社長:佐藤誠一)は、皮膚機能と生薬についての研究を進め、皮膚の基底膜構成成分であるⅦ型コラーゲンの産生を促進する生薬エキスとしてエイジツエキス*1を見出しました。さらに、エイジツエキスが紫外線やサイトカイン*2によるⅦ型コラーゲンの減少を抑制することを確認しました。
なお、本研究成果は、2015年8月22日・23日に開催された第32回和漢医薬学会学術大会にて発表しました。
1.研究の背景及び成果
皮膚の表皮と真皮の間には基底膜と呼ばれる部位があり(図1)、皮膚の機能維持に重要な役割を果たしています。近年、加齢や乾燥、紫外線や他の外的因子の影響による基底膜構造の変化が、しわやたるみなどの皮膚老化の一因となっていると考えられています。この基底膜の構成成分のうち、Ⅶ型コラーゲンは基底膜と真皮とを繋ぎ止めるアンカリング線維であり、皮膚の構造を維持するうえで重要な役割を担っています(図2)。さらにⅦ型コラーゲンは生理的老化・光老化のいずれにおいても減少することが知られており、これに伴って皮膚の老化がおこると考えられています。
本研究では、表皮角化細胞と三次元培養表皮モデルを用いて約300種類に植物エキスからⅦ型コラーゲンの遺伝子発現を促進する素材をスクリーニングし、エイジツエキスにその作用を見出しました(図3,4)。
また、エイジツエキスが紫外線や紫外線によって誘導されるサイトカインによるⅦ型コラーゲンの減少を抑制することを確認しました(図5,6)。以上の結果より、エイジツエキスはⅦ型コラーゲンの産生を促進し、皮膚老化を防止・改善する効果が期待できます。
今後は、本研究成果をもとに、スキンケア製品の開発に応用していく予定です。
図1:皮膚イメージ図
図2:基底膜イメージ図
*1 エイジツエキス:営実(エイジツ)という生薬から抽出して得られたエキス。エイジツはバラ科植物のノイバラの偽果または果実を乾燥させたもの。
*2 サイトカイン:細胞から放出され、種々の細胞間相互作用を媒介するタンパク質性因子の総称。免疫、炎症、生体防御において重要な役割を担っている。
エイジツエキスによるⅦ型コラーゲン産生促進作用
方法 | 表皮角化細胞及び三次元培養表皮モデルの角層上にエイジツエキスを添加し、24時間培養後のⅦ型コラーゲンの遺伝子発現量を測定した。同様にエイジツエキスを添加し、72時間培養後のⅦ型コラーゲンのタンパク質の発現を確認した。 |
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結果 |
図3:エイジツエキスによる表皮角化細胞のⅦ型コラーゲン産生促進作用 図4:エイジツエキスによる三次元培養表皮モデルのⅦ型コラーゲン産生促進作用 エイジツエキスを表皮角化細胞及び三次元培養表皮モデルの角層上に添加したところ、Ⅶ型コラーゲンの遺伝子発現及びタンパク質発現を添加濃度依存的に促進した。 |
エイジツエキスによるⅦ型コラーゲン減少の抑制作用
方法 | 三次元培養表皮モデルに紫外線(UVB)を照射またはサイトカイン(IL-1β、TNF-α)を添加後、培地中にエイジツエキス(150 µg/mL)を添加し、24時間培養後のⅦ型コラーゲンの遺伝子発現量を測定した。同様にして、72時間培養後のⅦ型コラーゲンのタンパク質の発現を確認した。 |
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結果 |
図5:エイジツエキスのUVB照射によるⅦ型コラーゲンの減少の抑制作用 図6:エイジツエキスのサイトカインによるⅦ型コラーゲンの減少の抑制作用 エイジツエキスは三次元培養表皮モデルのUVB照射によるⅦ型コラーゲンの減少とIL-1β及びTNF-αによるⅦ型コラーゲンの減少を抑制した。 |